純ジャパから見た海外・帰国子女から見た日本

正反対の二人が海外経験を通して得た出来事をお届け。

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【SANO】ListenとSilent

「聞く」

私たちは毎日友達の悩みを聞いたり、音楽を聞いたり、親からの話を聞いたり、「聞く」ことは毎日しているはず。

私は喋ることも大好きだが、人の話しを聞くことも好きだ。もちろん音楽もほとんど毎日聞いている。

でも実際「聞く」ということはそう簡単なことではない気がする。

随分前に読んだデール・カーネギーの「人を動かす(英:How to win friends and influence people)」でも何度も「相手の話を聞く」ということに触れていた。 日本に帰っていた夏、阿川佐和子さんが書いた「聞く力」という本を手にした。この本もタイトル通り「聞く」ということについて書かれていた。

毎日しているはずのことなのになぜここまで多くの本が出版されて、飛ぶように売れているのか?

それはやっぱり本当に「聞く」ということはそう簡単なことでは無いからだと思う。

考えてみて欲しい。最近いつ音楽を聞いただろう?iPodでも携帯でもラジオでもパソコンででもなんでもいい。いつ音楽を聞いただろう?

いや、いつ本当に音楽を聞いただろうか?なにかをしながらではなく、ただ音楽を聞くことだけをしたか思い出して欲しい。私は恥ずかしいことにいつが最後か思い出せない。いつも学校に歩いて行く途中や、勉強の間、ランニング中なんかに音楽は聞いているが、カラダや脳はあちこちに動いている。

友達や親と最後に話した時のことを思い出して欲しい。実際に相手の話に集中し、ちゃんと話を聞いていただろうか?明日の予定や、買い物リスト、来週ある提出日のことなど全く考えずただただ相手の話に集中して聞いたのはいつだろう?

これもまた記憶を辿って行くと意外と少ないかもしれない。勉強中、仕事中に話しかけられ、やっていたことを一度中断して話をする。でも「仕事に戻らなきゃ」、「次はなにするんだっけ」、「今晩はなにを食べよう」と脳がかってに一人歩きしてしまっていることが多くある。

こう考えてみると「聞く」というしぐさは簡単そうで難しいものだ。

英語で「聞く」はLISTEN。そしてListenにあるL、I、S、T、EとNを使ったもう一つの言葉がSILENT

 

つまり「聞く/LISTEN」ということは「無言/SILENT」になるということ。

これは静かに相手の話を聞くという「無言」でもあるが、それよりも心をSILENTにしなくてはいけないと本当に聞くということは出来ないと思う。

 

特に音楽を聞くときなんかはこれが難しい!ただ目をつぶって心を無にして聞いてみて欲しい。音楽の歌詞やメロディだけに集中し、夕方からの予定や、明日の仕事のことは一旦忘れて心から音楽を聞いてみて。

私は日頃から瞑想を練習しているのだが、ここでもまた心を無にする/SILENTにするということの難しさを通関する。人間とは5感で周りを感じて、脳で考える動物。脳内ではびっくりするぐらい速いスピードで化学物質のメッセージが飛び交っている。いくら集中し、無になろうと思っても音が聞こえてきたり、面白いものを見てしまったり、肌の上をなにかが走ったりと常に何らかの刺激がある。

特にFacebook、Twitter、Instagram、SnapchatといったSNSが発明されてからはさらにSILENTになることが難しくなったと私は思う。

寝る前静かにベッドに横たわって心を無にする。でも遠くで携帯のヴァイブレーションの音がする。そうすると大切なメール?スパムメール?フェースブックのメッセージ?といろいろと考えてしまう。

でも練習とともにLISTENとSILENTはできるようになる。

まず人と話すときは気が散るようなものを置いて、相手の目を見て話を聞いてみよう。そしてもしアタマがかってに違う方向に行ってしまいそうになったら、また話している相手と会話に引き戻す。これの繰り返しこそがLISTENとSILENTを鍛える唯一の方法だと思う。

「聞く」という簡単な動作は「学ぶ」ことの第一歩だと私は思う。